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スキー用具・用品の傾向の変遷


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 実業之日本社 SKI'77-1、80-1、85-1の別冊付録「スキーカタログ」を引用させて頂いています。有難うございます。
 またこの時代('90頃まで)の実業之日本社には、とくに用具・用品関係の原稿を毎年大量に発表し、貧しいプロスキーヤーの生活を支えて頂きました。この面でも、有難うございました。
 とくに親しくおつき合いさせて頂いた山本さん、根津さん、舟橋さん、橋本さんなどの編集長、編集者の皆さんとは、また機会があれば一度お会いしたいものです。
 なお'95については、山と渓谷社 skier'95-1 別冊付録「世界のスキー用具カタログ」を引用させて頂いています。有難うございます。山渓にも一時期は大量の原稿を書かせて頂きました。とくに元編集長の松本さんには可愛がって貰いました。

2004/10/05 管理人


'77スキー用具の傾向と話題

(実業之日本社 SKI'77-1 別冊付録「スキーカタログ」より)

今年のニューモデルは外見よりも中味で勝負!!
 本当の"スキー通"とは、テクニックが自慢できるだけではなく、用具にも精通しているヒトのことをいいます。キミの知識の幅をグーンと広く深くする'77シーズンの話題と傾向を集めてみました。
 まず、総括的にみると、インスブルックオリンピック直後の今シーズン、さぞやいろいろなニューフェイスが、という期待がありました。
 しかし、その期待に応えるものは、あまり見当たりません。従来からのものを素材、構造面から開発した用具が目立ちました。


スキー

●当り前になったレーシングソール
 昨シーズンまでは、価格的にも中級品以上のスキーに用いられていた半透明の滑走面(レーシングソール)が普及品にも採用されて、ますます般的になりました。スキーデザインも表面だけでなく、裏面(滑走面)も考えなければならなし、時代になったともいえます。表裏同デザインも珍しいものではなくなりました。カザマスキーは1万8000円までの全機種にネーム入りレーシングソールを採用しています。
 また、レーシングソールを表面材に用いたモデルも多くみられます。滑走面材を表面に用いることで、@雪がつきにくい、A少々のキズなら表面を研摩するだけで新品と同様になる(デザインの修整が不要、汚れをと〜)やすい、オーバーホールが容易など)、Bワックスの浸透率が高い、などがこのタイプのスキーの特徴としてあげられます。
 これとは少し異なるが、フィッシャー(オーストリア)のトップモテ'ルに採用されているインタールス・システムもスキーのデザインをいつまでも新品のように見せます。これは上面のABSシートが単なる表面プリントではなく、厚みのあるシートの中まで色が通っているので物に当てたり、ひっかいたりしてもスキーの上表面は色がはげず、常に美しい状態を保つことができるという、スキーヤーにとって耳よりなお話です。
●多目的な使用ができるコンパクトスキー
 "コンパクトスキー"耳なれない言葉ですが、今シーズン注目を集めているのが、この短いスキー。
 従来のショートスキーは技術導入・上達を目的とするものと、セカンドスキー的なものと、必ずしも用途がはっきりしていませんでした。コンパクトスキーは、上級者から女性までレギュラースキーと同じように楽しめるリクリエーショナブルスキーといえます。
 欧米でもコンパクトスキーは人気上昇中といわれています。ロシニョールにも6機種のコンパクトスキーが登場しました口その代表格モデル"アルページュ"は、最も幅があり他のモデルより溝も3_広く、滑走面の溝の中央部がカットされ、テールも7_アップした設計になっています。これについてロシニョール社のウォーレー技術開発部長は「深雪、湿雪などあらゆる雪質に適応し、操作が容易であつかいやすい。エキスパートからビギナー、レディス、幅広い層のスキーヤーに楽しめる内容をもっている。シャープなすべりにもゲレンデスキーにも、フリースタイルスキーにもOK」とその多目的性を強調しています。
 また、オーストリア・ヘッドスキーのべーダー社長もコンパクトスキーについて「上級者にとっては深雪でも急斜面でもラクにすべれるスキー、一般にはリクり工ーショナルなスキーができる。ヘッドはこれをホットラインと呼んで3年前から発売している。ホットヘッドはヨーロッパでベストセラーだ」と語っています。
 フリースタイルスキーはアメリカ生まれでアクロバティックなスキー技術や、音楽に合わせてすべるエレガントなスキーなどの総称です。その目的に合わせ、スキーもいろいろなタイプが発表されています。滑走面の溝の中央部や、後半部をカットしたり、テールアップしたりしたモデルがそれです。
●流行を先取り、舶来ブランドのラングラウフ商戦
 ラングラウフとは本来"長く走る"という意味ですが、スキーの場合、雪上散歩とか歩くスキーといった感じで、クロスカントリーとかディスタンスあるいはノルディックといわれるスキーと同形態ですが、タイムを競うレースではありません。ヨーロッパではコースもいろいろあって、各人の体力に合わせて選べますし、各コースにはトレーナーがついていますから安心して参加できるということです。
 日本でもSIA公認スクールのなかにラングラウフスキーを指導する学校もあり、コース作りもはじまっています。スキーメーカー各社は、競ってラングラウフ用のスキーを今シーズンに向けて発表しています。日本での流行を先取りしてか、アルペンスキーー辺倒だった外国の有名ブランドがいっせいに扱い品目に加えています。
●大胆なモデルチェンジも見られる
 ここ数年、スキーのデザインは毎年どこか変わるのが当然のように考えられていました。今シーズンに向けて全面的にモデルチェンジするブランドの代表格はクナイスル(オーストリア)とヤマハでしょう。反対にまったく前年通りという小賀坂のような例もあります。
 クナイスルはインスブルックオリンピックを記念し、クナイスルのシンボルであるスターマークを片足ずつ中央部にアレンジし、ペアでひとつのマークができるという大胆なデザインです。
 ヤマハは各タイプごとにパターンを分けたデザインを採用しています。真っ白なハイフレックスをはじめ、パラマウント、オールラウンドなど、おなじみの名称はそのままですが面目は完全に一新させています。
 変えない小賀坂では、デモンストレーター層に圧倒的な人気のオガサカの白(SS-W)の上に"別格のグラス"のニックネームをもつ"ウルトラ・エス"を誕生させました。テクニシャンが使いこなす楽しさを味わえる上級用スキーというふれこみです。
 デザイン以外ではボルクル(西ドイツ)が新しいゴム質のトップエッジ素材"エラストマー"を2機種に採用し、安全性を打ち出しているのが注目されます。
●軽量化が進むとスキーは長くなる?
 スキー用品全般について重量の軽減をはかることは、メーカーにとって、かねてからの研究課題でした。スキーが軽量であることは当然ながら機敏な操作性につながります。負荷作用が少ないのでエネルギーのロスも防ぐことができます。ただし、単に軽量化するだけでなく、性能を低下させずにそれを行なうのが必須条件となります。耐久性、バランス、弾性、震動呼吸…など、軽量化によってそこなわれる恐れのある機能は多く、メーカーの研究課題も当然そこに集中します。
 カーボンファイバー、ケプラーなどの新素材、オメガ構造をはじめとする空洞芯構造、ハニカム芯材、インジェクション製法…なども性能向上と同時に軽量化を推進する手段といえます。今シーズン登場するスキーのなかから軽量化をポイントにしているモデルを紹介してみましょう。
 軽量なスキーといえばアルミハニカム芯材を用いたヘクセル(アメリカ)が代表的存在といえますが、同じハニカムを使用しているのがカザマスキ丁。アメリカのセンチュリー社と技術提携してアメリカで製造しているカザマハニカムフォームは3シーズン目をむかえ、ニューモデルを2機種登場させます。ハニカムフォームは、アルミハニカムに粘性吸収性にすぐれたウレタンフォームを注入した独自の構造の芯材をウェットラップしたグラスボックス構造のスキーで、軽量さも特徴の一つです。
 スワロースキーは世界にさきがけてインジェクション製法を開発して3シーズン目になります。インジェクションスキーとは、モールドのなかにあらかじめグラスファイバー、エッジ、ソールなどすべての部品をセットしておき、そのなかに2種類の液状樹脂を注入すると内部で化学反応を起こして発泡し、硬質ウレタン樹脂を芯材としたスキーができあがる新しい製法によるスキーです。耐久性、復元性があり、軽量であること、発泡のさせ方でいろいろな性能をもたせうることなどが特徴で丸発泡硬質ウレタンの特性として中心部ほど密度が低くなるので中空構造に近い状態ですから、軽量なスキーができあがる訳です。
 ダイナスター(フランス)のオメグラスも軽量で切れのよいスキーとして知られていますが、それを上回る性能という、;、れこみで登場するのがアタリグラスです。ダイナスター独特のオメガ構造のなかで、従来はウレタンフォームを使っていた部分にさらに軽量なアクリルフォームを使用し、グラスの使い方も変えて性能アップをはかっています。
 美津濃では軽量な木芯をGFRPでボックス状に包み、上下面にヒッコリーを配したボックス構造スキーを開発しました。ブルーインパルスの「ジュニアレーサー」「ガーランド」「フェアリー」の3機種が新発売されます。"水に浮くほど軽い"をキャッチフレーズにしていますが、操作がしゃすく、しかも曲げ剛性、ねじれ剛性のバランスがとれているので安定「生にもすぐれています。美津濃では、「短いスキーが好まれる最近の傾向は、軽量化が進むにつれて長いスキーに再び人気が移行することになるかも…」といっています。
●新しい価格づけで値引きは少なくなる?
 スキー用品(とくにスキーとスキー靴)の価格の乱れがここ数年続いています。これは供給が過剰気味な市場で、価格競争が激しく行なわれているためです。このままではスキー用品の価格についてユーザーが不信感をもち、それが、ブランドや販売店の不信につながるのではという心配から、今シーズンはメーカーや輸入商社がその対策にのり出しています。
 結論から先にいうと、"今シーズンは価格が下がるが、値引きの幅は極めて少なくなる"ということです。つまりはじめから値引きをした価格づけをしているという訳です。このシステムは細部でちがってもほとんどの輸入スキー用品にとり入れられています。メーカー、商社は「同一モデルが昨年の割引販売価格より安くなることはない」といっていますが、ほとんどが大なり小なりモデルチェンジ(滑走面をレーシングソールにするなども含めて)を行なっていますから、同』モデルはほとんどありません。
 昨年発表したカザマのハニカムフォームスキーは各モデルとも全く同一ですが、今シーズン1万円値下げします。そこで「昨シーズンお買い上げになった方に限り無料でオーバーホールいたします」とカザマスキーは発表しています。これも新価格政策の収拾手段の一つでしょう。

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スキー靴

●4バックルとリアヒンジが主流
 「イタリアのスキー靴メーカー各社は、もっかポリウレタンにつぐ素材探しに懸命だが、なかなかこれはというものは開発されない」と先ごろ来日したイタリアのスキー靴"ノルト"のメーカー、ノバスポース社・マッオカート社長は話しています。シェル素材として、ポリウレタンがこれだけ普及してしまうと、メーカー各社は競争手段を、新素材の開発か、品質、機能上の付加価値に見出さなければなりません。そして'77シーズンは後者での競争となりそうです。
 外見上からの特徴は、昨年一般的だった5バックルが姿を消してほとんどがワイヤーループの4バックルになったことでしょう。バックルの幅もワイドで薄くなり、ワイヤーループが足全体を均一にしっかり締めつけます。これだと故障があっても部品の交換が簡単にできます。
 また、2ピースのシェルをサイドでリベットした形(サイドヒンジ)が少なくなって、後部でジョイントさせる"リアヒンジタイプ"に変わっているのも全般的な特徴です。これは足首を動かしやすくし、前傾も容易にさせる利点があります。
 カラーは昨年まで明るいオレンジ、イエロー、レッドなどが主流でしたが、'77シーズンモデルでは、ブラウン、グレー、ベージュなどシックなカラーも仲間入りし、いろし、ろな組み合わせのツートンカラーも多くなっています。そしてそのほとんどが"つや消しクタイプであることも全般的な傾向です。また、半透明な感じのシェル(ドロミテのカレラ)や、透明で、ジーンズ地の内張りを透かして見せるシェル(ダイナフィットのジーンズ)などは変わりダネといえましょう。
●新機構を取り入れたニューモデル
 最近、クラマー、プレルをはじめ大勢のレーサーに使用され、レーサー対策に力を入れているダイナフィットではコンペティションモデルに、いろいろな新しい機能を取り入れています。
 シェルシャフトの後上部スポイラーにある前傾調節用の「リア・スリット・スライダー」は、これを引き降ろすことにより、バックルをゆるめなくてもラクに直立したり、走ったりすることができます。そしてこれを引き上げると前傾姿勢が得られます。また、第一バックルの前に風の低抗を低減させ同時にバックルを保護する機構「トウ・スポイラー」を採用しています。風洞実験の繰り返しから生まれた機構で、時速にして2.5`のスピードアップが可能だということです(メーカー談)。
 レタポアの"キリー"では、J・C・キリーのアドバイスによって生まれた独特のアルマチュール機構を採用しているのが特徴です。これは簡単にいうと「サイド方向と後方向に強く、前方には適当な柔らかさという…見矛盾した機能をスキー靴に与えたもので、適確なエッジ操作ができ、後傾姿勢を支え、前傾に対しては柔軟さがあ卜)、適度な弾性も備えている」とメーカーでは優秀性を説いています。このアルマチュールは後部にあるカムを回転させることによって前傾角度と柔軟さを自分のすべりに合わせて変えることができます。
 表面からは見えませんが、靴のユガミを防止し、より正確な動作をスキーに与えることができ、軽量化をはかれるというアンチトーション・システムを採用しているのはガルモント(イタリア)です。
 このほか、足にそったシェルテ"ザインと足をシェル全体でくるむように締める新しいシステムを採用し、一つのバックルが締める範囲を拡大させるカベール(イタリア)のAAシステムなど、メーカーごとにいろいろな工夫がみられます。
 プラスチック製になって"スキー靴は歩くためにあらず"といわれ、歩きにくいものであるとされていましたが、'77シーズンには各メーカーごとに、軽量化することや、靴底に工夫することなどで歩きやすくしょうとする努力がみられます。
 インナーブーツも、フロー(ガムパッド)をはじめ、各メーカーともフィット感、保温機能などの向上に独自の研究をすすめています。外から見える部分のカラー、テ"ザインに凝ったものも登場しています。高級タイプには皮革を使用する例が多く、内張りもファー(毛皮)、ジャージのほか、ダイナフィットはローデン(ピュアウール)を使用して保温性、吸汗性、復元性にすぐれていることや、濡れても硬化したり悪臭をはなつことのない点での優秀性を主張しています。
●世界的レベルに達した国産靴
 国産スキー靴にも著しい進歩がみられます。世界的な傾向をふまえて、'77シーズンモデルはすべて4バックルになっています。
 バイソンは、シェルのデザインのもとになる金型(モールド)をスキー靴製造の本場イタリアで製作し、世界の一級品と比肩できるモデルであることをPRのポイントにしています。世界的な実力のある日本の化学工業も、スキー靴のための新しい素材開発に協力しているそうです。
 また、日本のスキー靴製造のメッカ奈良県では、メーカー数社が合同でシェルモールドの機械を導入して、製造技術もぐんと向上しました。外形は同じですが、メーカー各社はインナーブーツで勝負をするといっています。

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バインディング

●歓迎すべき国産化
 安全スキーに欠かせないスキーバインディングは、ステップイン式、ワンタッチ式、プレート式など、形態の上から三つのタイプに分類できます。
 ステップインはサロモン、チロリアなどに代表される踏みこみ式といわれるタイプ。マーカーやルックネバダなどはワンタッチ式で知られています。また、プレート式ではスイスのガーチがその代表格でしょう。
 '77シーズンは、いわゆるニューブランドとして華々しく登場するものはありませんが、各ブランドとも、代表するモデルとは異なるタイプを新たに開発したり、販売形態を変えたりするなど、内容が変化しています。
 西ドイツのマーカー杜は、日本における技術、販売提携先を今年からヤマハに変更し、すべてのモデルを日本で生産することにしました。今シーズン発売されるのはトウピース4、ヒールピース9、その組み合わせば10タイプになります。このほか子ども用やレンタルモデルもそろっています。昨年はヒールピースだけで1万6000円だったコンパクトロー夕マートが国産化によって、M4とのセットで1万6500円になりました。
 また、ホープでは5重関節機構のトウピース"H5"を新しく発売します。サロモンも代表モデルの555Sを国産化して昨年より6000円ほど安くなっています。このほかオルソップ(アメリカ)も3タイプの国産モデルを発表する予定です。国産化によってすぐれた用具が安く手に入ることは、大いに歓迎するところです。
●プレート式の人気、上昇中
 このところプレート式バインディングの人気が徐々に上昇しています。他のタイプのバインディングはほとんどが、トウで横方向、ヒールでは.上方向にしかリリース(解放)しませんが、プレート式の場合、より多方向へのリリースが可能なので、いっそう安全性が高くなる、というのが人気の原因となっているようです。
 このほか、プレートに靴が固定される、リリースはプレートごと行なわれるので靴底に土などの汚れがついていても摩擦抵抗には関係がない、身体の総重量が均等に分布されるためスウィングウエイトが小さく回転操作が容易である、などがプレート式の利点としてあげられています。
 アメリカで4年前に発売され、現在では第2位の市場シェアをもつといわれるプレート式バインディング"ベッサー"のカート・ヴォン・ベッサー社長は「25年前の木製スキー、皮革製スキー靴という条件下と、それらが著しく進歩した現代とでは、バインディングに対する考え方を改めるべきである。レーサーにしても同じコースを25年前の3分の1のタイムですべっている。プレート式はこの25年間の科学の進歩をとり入れ、現代のスキー技術にマッチした機構を備えてい'る」と、プレート式の進んだ安全性を強調し、短時期でベッサーが成長した原因を説明しています。
 プレート式バインディングはガーチ、ベッサーのほかに、チロリア、ゲッツェ、バート、ヘッドなどですが、今シーズンからルックネバダでもプレート式を登場させます。価格はチロリァPB-IIの1万3000円からルックLK5の3万7500円まで幅がありますから、ご予算次第といったところです。

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スキーストッパー

●多彩なスキーストッパー
 バインディングとともにスキーに付ける、スキーストッパーがかなり普及しています。流れ止め、スキーブレーキなどとも呼ばれていますが、その名のとおり転倒してスキーが足から離れても、遠くまでスキーが流れていかないようブレーキをかける装置です。
 流れ止めといえばバインディングからヒモ状のベルトを足に巻きつけるストラップタイプがほとんどでした。しかし、このタイプではスキーが足から完全に離れないので、安全性に問題(転倒の形によっては捻挫や骨折につながる、とくに刃物のように鋭いエッジによる創傷の例が多い…など)があるとされるようになりました。また、スキーウェアのスタイルの変化もストラップ式を不向きなものに変えています。
 スキーストッパーは、スキーが靴から離れると自動的にスプリングなどの作用で、プラスチックや金属の足がスキーのサイドに突き出てスキーにブレーキをかけるものです。
いろいろなブランドが登場していますが、ガーチでは'77シーズンからスキーストッパーつきでバインディングを発売しています。価格は昨年と同じです。
 スキーストッパーの取り付けはバインディングとともにセットするタイプが多いのでバインディングメーカーではガーチのように自社のバインディング専用のスキーストッパーを発売しています。サロモン、コバーなどはそのケースです。価格は3900円から7800円まであり、今シーズンには10タイプを越すスキーストッパーが発売されます。
 スキーヤー自身の安全と、他のスキーヤーに危害をおよぼさないためにもスキーヤーのエチケットとして、流れ止めばつけるべきです。スキーストッパーは便利でスマートな流れ止めといえます。

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ファッションコーディネイト

●トータル化をねらったブランド
 ブルーインパルス(美津濃)は、スキーとスキー靴のニックネームを統一して、テクニックに合わせて選びやすくしています。
 たとえば上級者向けには、ブルーインパルスレーサーという名のスキーとスキー靴がある、といった具合に、初級者向けまで6タイプそろっています。ブルーインパルスブランドにはこのほかにスキーポール、スキーウエアがあってテクニックのレベルに合った機能、耐久性、ファッション感覚が備わっています。
 さらにこれらとコーディネイトできるデザイン、カラーのアクセサリー類(手袋、帽子、バッグなど)もそろえて、おしゃれなスキーヤーの要求に応えています。
 ピエール.カルダンといえばオートクチュールデザインのほかにインテリアなどのデザインも手がける多面的な活動をしているデザイナーとして知られています。すでにカルダンブランドのスキーウエアは日本で製造発売されていますが、今年はスキーとストックにもカルダンが登場します。
 また、今年から技術提携で国産化されるスイスのHCC(アンリ・シャルル・コルソネ)もデザイナーブランドのスキーウエアですが、発売元のデサントではHCCブランドのスキーを輸入します。HCCスキーウェア'77シーズンモフ「ルのアーマカラー、デザインとコーディネイトしているエレガントなスキーです。
 帽子、手袋、小物入れなどと、トータルファッションが楽しめます。


《'77シーズンのニューブランド》
 100ブランドを超す百花績乱のスキーウエア市場に、今年も華やかに登場したニューブランドを紹介しましよう。
○サマス(三井物産スポーツ用品販売)
 レーサ志向のウエアで、昨年来日したイタリアスキー連盟のインストラクターたちが着用していたもの。スキーパンツ、ジャケット、サロペットがあり、コーディネイトできる。スキーパンツ2万6000〜3万4000円、ジャケット1万6000〜5万2800円、サロペット1万6000〜1万9000円
○ロフェ(三井物産スポーツ用品販売)
 デザイン感覚、躍動感をカッティングの中に生かしているアメリカ生まれのウエア。ジャケット1万4000〜1万8000円、サロペット2万〜2万4000円
○エンゲル(リーベルマン)
 インスブルックオリンピックで、オーストリアの選手団、関係者が着用していて、人気を呼んだブランド。技術提携により国産化し、本格的に日本市場で発売される。キルティング1万2000〜1万9000円、スキーパンツ1万8000〜1万9000円、サロペット1万4000〜1万5000円
○エスプリ(モニック)
 ペェディグリーが社名を「モニック」に変更して、ヴァンジャケットとの共同企画で発売する新しいブランド。怪獣ネッシーの頭部をワンポイントにしている。アンチグリスを使ったスーツセットがメイン。マーク1スーツセット2万9000円〜4万5000円、マーク2スーツセット1万9000〜2万1000円、マーク3キルティング1万2300〜1万3800円
○スノーバ二ー(ニチレイスポーツ)ニチレイスポーツのオリジナルウエア。セーターとキルティングをペアで販売する。キルティング&ペア1万2000〜2万5000円
○スノーライオン(ニチレイスポーツ)
 ダウンタッチの合成綿を使ったキルティングがメイン(アメリカ製)ベスト8500円、パーカー2万2000〜2万7000円OHCC(デサント)女性ものが大半を占めるパステル調のスキーウエア。帽子、手袋をはじめとするアクセサリー類も豊富。ウエア、アクセサリー、スキーとトータルコーディネイトができる。スーツセット2万6000〜6万9000円
○スキーバム(内山製作所)
 オリジナルのジュニア用スキーウエア。キルティング5300〜7200円、サロペット5800〜7900円、ジャンプズーツ7500〜9500円286
(実業之日本社 SKI'77-1 別冊付録「スキーカタログ」より P-222〜226)

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80 WINTER スキー用品の傾向と話題

(実業之日本社 SKI'80-1 別冊付録「スキーカタログ」より) ますます機能的に

スキー新しい流れ / ミッド、ソフト

 80シーズンに向けて、メーカー各社が競って、新しいコンセプトにもとづくスキーを発売している。ヨーロッパやアメリカでの人気を背景に発売されたコンパクトスキーは、なぜか日本のスキーヤーには受け入れられないまま姿を消しつつあるが、かわって登場するのがMIDとかSOFTと呼ばれる種類のスキーだ。
 MIDはミディアム、すなわち中間の意味だが「レーシングスキーの長所とコンパクトスキーの長所を兼ね備えた、高性能て多用途的機能を有するスキー」というのがそのキャッチフレーズ。形状的に共通した特徴は、安全性を重視したラウンド・トップ、テーパー角を大きくするためにやや広くしたアッブターン部分、シャープなターンを容易にするコンペティションタイプのサイドカット、滑走面のグルーブ(溝)をなくしても直進安定性のある設計、などだが、サイズは身長プラス10cmが標準だ。
 最近はレーサー的なスポーツタイプのスキーを好むスキーヤーが多くなっているが、このMIDタイプのスキーは、1台で急斜面もコブも新雪もこなせるので、スポーツライクなスキーを楽しむ人には最適といえるだろう。レギュラースキーよリ少し短めだから操作は容易で、しかもレギュラースキーと同じようなスキーが楽しめるこのMIDタイプは、ブランドごとに呼称もちがい、考えも異なるが、80シーズンの新傾向として注目できる。
 表面デザインを80シーズンに向けてフルチェンジをするのは、国産で1プランド、外国製2ブランドと少なく、ほとんどが前年と同じパターンで登場している。

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スキーブーツ数々の新設計が登場

 ここ数シーズン、スキー靴メーカーの開発競争の焦点は、いかに軽量化をはかるかにあった。軽くするには新素材の開発、採用と同時に、シェルを薄くしたり、バックルの数を減らしたりする訳だが、それも度を越すとスキー靴自体の機能を損ねる欠陥ともなりかねない。事実、ヒビ割れが生じたり、合わせ部分から水が浸んだりするむケースもあったようだ。ここに至ってメーカー各社は軽量化競争に終止符を打ち、新たな技術開発競争の時代を迎えた。
 日本のスキー靴市場では、かねてよリ外国勢優位の時代が続いている。昨年('79)、日本に輸入されたスキー靴は53万足、これは総需要の60%を越える数で、ちなみにスキーの輸入は30万台強だから、スキー靴分野での外国製品が市場に与える影響力の強さがわかるだろう。
 80シーズンにこれら外国製品が売りものとしているのが、独自のメカニズムによリ新たな機能を付加価値としている点である。
 独自の設計の靴底が最少のエネルギーで効果的な重心移動を可能にするという新機能を、スキー靴が皮革からプラスチックに変わった以上の革命的変化と大々的にPRするメー力ーをはじめ、前傾姿勢がとりやすく、しかもそのとき甲部分に余分な圧迫のない設計、かかと部のホールドをよリ確実にして足の力を正確にスキーに伝える機構など、各メーカーのメカニズム競争は激烈な様相をみせている。
 なかにはバックルの締め方を従来とは逆方向にしたものや、甲部分でハンドルをまわして締めるタイプなどユニークなモデルも登場している。
 スキーにしてもスキー靴にしても、かっての家内工業的な小規模生産から、莫大な設備投資が必要な産業に変化している。量産となれば、明確な方向性を打ちだして進まなければならないのは当然のことで、デザインチェンジが少なくなる必然性もこのへんにあるといえよう。
 なお、スキー靴のカラーはかってのような派手な色は姿を消して、グレー、ネイビーといったスキーウエアに合わせやすい色が中心となっている。

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バインデイング 軽量化がいちだんと進む

 80シーズン、スキー用品の軽量化競争のターゲットはバインディングといえるぐらいに各社の新製品は軽さがひとつのポイントである。従来のアルミダイキャストなど金属の部分をプラスチックに変えている。耐久性の面でも十分テストずみで、アダルトの使用にも問題はないといっている。これらはいずれもステップイン・タイプだが、従来軽いとされていたワンタッチ式と重量はほぼ同じ。
 また、スキーにベースプレートを取りつけ、そこにバインディングをはめこんでセットするタイプも登場している。運搬のときはずしておけばかさばらないし、ベースプレートをつけておけば他のスキーにも共用できるなど、新しいメリットをメーカーは強調している。これも軽量のひとつのアイディアだろう。この締具はトウとヒールの両方でアジャストできるので、すべリの目的に応じてスキーに乗る位置を変えることができることも特徴だ。このほか、転倒ではずれた靴が容易にスキーに戻るリトラクタブル・バインディングも軽量になって登場する。


 なお、西ドイツでは、今年から締具の解放強度の表示は国が定めた規格によリ統一することが義務づけられ、どのメーカーの締具でも表示と解放強度が共通になっている。日本では完全実施は少々先のことになりそうだが、80シーズンは外国製品を中心に表示方法を変えたモデルが登場している。

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ゴーグル

 ゴーグルは曇り止め加工とフレームやベルトのファッション化がさらに進んでいる。曇り止めのアイディアとしては、フレームに外気を通すベンチレーション機構とレンズ自体に化学的な加工を施す従来の方法のほかに、レンズの表面を薄い金の被膜で覆い、そこに熱奄流を通すエレクトラゴールドというアイディア商品も登場している。
 また外国メーカーのなかには、日本人の顔型にフィットするフレームの形状を研究して、80シーズンからすべて切りかえるとしているところもある。


ファッション ダウン人気は今年もつづく

'80ファッションコーディネイト  昨シーズンからの人気スタイルはパフィ・ルック。ふ⊃くらした上衣、すっきりしたパンツのセパレート型、逆3角形スタイルとでもいおうか、これまでの上下がそろったスーツスタイルにとってかわるものになりそう。同時に冬の街着としても利用できるようなクロスオーバー・ファッションが人気となるだろう。
 1シーズンに何回も使わない高価なスキーウエアの有効的利用といった不況時代的な考え方よリも、スキーウエアが本来もっている保温性(暖かさ)や機能性(軽く動きやすい)は、街着としても快適なはずという発想から生じたものといえよう。スポーツウエアとしてのカッコよさが前提条件となるのはもちろんである。
 パフィ・ルックの代表はダウンジャケットだが、ポリエステル綿のジャケットにも、ニュータイプのキルティングとして昨年のプードルをさらに進めたアイディアのスノーボールが登場している。
 ふっくらした上衣に対しては、すっきりしたパンツスタイルが似合うところから、ふたたびスキーパンツに脚光が当たっている。ここしばらくはサロペット全盛時代がつづいていた。スキーパンツはヒザやむこうずねにパットかついた、よリレーサー的なものになってしまったことも原因だったようだ。80年モデルでは、サロペットの特徴である保温性を考慮した、新しいアイディアのスキーーパンツも登場している。
 ナイロンタフタ一色だったスキーウエアの素材も、街着的利用の増加傾向を捉えて、綿タッチのもの、コーデュロイ、ジーンズなどおしゃれっぽい生地の使用が多くなった。C・ディオール、D・エシュテル、P・カルタンなどオートクチュール・デザイナーブランドも、それぞれ個性的なスキーウエアを発表している。


ラングラウフ 世界の新製品がでそろう

 最後に、ラングラウフにも少々触れておこう。
 ヨーロッパやアメリカでは、1960年代のテニス、1970年代のジョギングにつぎ、1980年代の人気スポーツはクロスカントリだと予測されるはど人気上昇中のこのフングラウフも、日本では未だしの感が強い状況である。外国スキー界の動きにはきわめて敏感な日本で唯一の例外といえるはどだ。
 しかし、各地にコースづくリが進められ、用具、ウェアともに外国の新製品が数多く紹介されているから、"翔んでる"スキーヤーとしてはいちおう注目ておく必要があるだろう。
(実業之日本社 SKI'80-1 別冊付録「スキーカタログ」より P-6〜7)

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'85 姿・カタチも機能も充実

(実業之日本社 SKI'85-1 別冊付録「スキーカタログ」より)

期待の新スキー用品
 20年ぶりという豪雪で、例年になく長いスキーシーズンをエンジョイしたスキーファンの諸君にとって、オフシーズンの楽しみは、'85シーズンに向けて待機している用具やファッションに関する情報だろう。
 '85シーズンの新製品は、スキー界全体に影響するイノベーションこそ見当たらないものの、目新しさや、楽しさを演出するためのくふうはいろいろある。
 '85シーズンに向けたスキー用品ニューモデルの話題をピックアップしてみよう。

スキー

 さて、'85シーズンに向けてメーカー各社は製造技術や、機能・デザイン開発などで独自性をアピールしようとしている。
 製造技術で注目されるのは、フィッシャーのバキューム・テクニックだろう。西ドイツの宇宙航空工学界の権威の指導で開発された真空成型法。素材と素材の問に空気のすき間が生じることなく樹脂が注入でき、一枚構造に近い理想的なスキーが実現する。今シーズンはRC4、ライトのトップモデルに採用、3年間の保証つきである。
 クナイスルは、コンピュータ・コントロールによる独自のインジェクション製法を一歩進めて、FRPと超軽量・超剛性アルミ合金パラデュールSとの組み合せに高純度ウッドコアをプラスしたニュー・サンドイッチ構造を開発、6機種に採用している。軽量化と剛性を両立させ、適度な弾性の確保を可能にした。高速でのコントロール性能がよく、とくにスーパーGに最適であるとしている。
 このスーパーG(スーパー・ジャイアント・スラローム)は、DH(滑降)とGS(大回転)の中間ともいうべきダイナミックな競技種目である。ワールドカップの正式種目になったことから、メーカー各社はいっせいに専用モデルを発売している。
 ダイナミックが発売するVR25は、レーサー層に人気の高いVR27に装備されている構造に加え、コア部分にチューブラー構造を採用している。ポリカーボネート合金のチューブをスキー軸の方向に2本配し、PUフォームで固めた新しいコンポジットコアで、ウッドとPUの中間的運動性能をもつ。軽量化され、操作性、滑走時の安定性を向上させている。
 振動吸収については、アトミックのビオニック構造、ロシニョールのV.A.S.、ケスレーのセンソシステムをはじめ、各メーカーがいろいろな開発を行なっている。
 ところで、これらはいずれもスキー内部に衝撃吸収材を内蔵したものだが、「これではスキーの構造を複雑にするなど、生産面でのマイナス部分が多い。スキー自体の性能を100%発揮させるため」に開発したというのがダイナスターのコンタクト・システム。ダイナスタ一社とアメリカのエンジニアリングメー力ー、バテル社との共同研究で開発されたもので、5つの層で形成されたカプセルをスキーのショベル部に取付けて、バイブレーションを吸収する画期的なシステム。
 すでに2年前からワールドカップレーサーに使用させていたというから、ご存知のスキーファンも多いだろう。エッジが雪面をよくとらえ、ターン操作が容易になり、高速時の安定性が得られる。オメガ構造のスキー6機種に搭載する。このようにアタッチメントで振動吸収をはかるシステムとしては、ヘクセルのトッププロテクター・システムもある。
 昨年、美津濃が開発したスーパールーフ構造のロス・アンデスは、ニューセラミック、カーボングラファイトを主材にし、振動減衰性を向上させ、滑走性のよさは高い評価を得ている。'85シーズンに向けて01-Rを新発売、計3機種になった。
 このロス・アンデスはルーフ部分の構造に機能的な秘密があるが、インジェクションでこれと酷似した外見のスキーを開発したのがスワロー。稜構造(リッジトップシステム)で、従来の平面状設計と異なる種々の可能性があるとしている。'85シーズンはレクリエーション1モデルとクロスカントリー1モデルに採用している。
 エランが'84年のISPOで発表したVSS(バリアブル・サイドカット・システム)は「1台のスキーを3通りに活用できる、新世紀を創るスキー」のキャッチフレーズで注目された。
 スキーの前部と後部に特許のVSSスリットがあり、その間隔を調節することによってスキー自体のサイドカーブとフレックスを、S-A-Lタイプに自在に変化させられるという機能をもつ。つまり、スキーの前と後ろにタテの割れ目があって、その幅を専用のキーで調節する仕組み。調節しだいでアイスバーンから深雪まで、レクリエーショナルスキーから大回転競技までを1台のスキーで対応できる。スキーヤー自身がスキーの設計者であり、理論家になれる、という訳だ。スキー自体はグラスファイバー、1本モールドエッジ、レーシングソール、ABSトップシートの構成。
 今シーズンはトライアル展開なので200〜300台ぐらいしか輸入されない。価格は12万円。新しがりやの上級者にはこの"割れ目スキー"、注目品といえる。
 カザマは'83年7月、アメリカ・ワシントン州のスキーメーカー、センチュリー社を買収、主な製造設備、生産ノウハウ、パテント使用権を獲得した。'85シーズンはこれを活用し、ザープロのブランドで4モデルを発売、カザマスキーとは異なる展開を企図している。
 デザイン的には相変わらず華麗で、各ブランドが個性を明確にしょうとしている。かつてストラートのチョコレート、SMコンペのシルバーメタリック、FP・V.A.S,の地中海ブルーなど、スキーデザインにおいてリーダーシップをとってきたロシニョールは、V.A.S.のデザインをシルバーベースにブラックラインのコンビデザインに変更した。
 オガサカは新機種は登場させていないが、従来のラインナップにデザインのバリエーションが6タイプ加わる。固定ファンが多いため、目先の変わったものを求める多くの声に応えたものという。ユニティシリーズと303、202などの人気モデルにニューデザインが登場する。

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スキーブーツ

 '85シーズンのスキーブーツの話題は、リアエントリー夕イプにつきるといってもいい。リアエントリーは、なによりも着脱の容易さと、シンプルなスタイルで軽量化が図れることがメリットである。しかし、その反面、ホールドが不十分で上級スキーヤーには不向きとされていた。
 ところが、サロモンが発売4年目にして、リアエントリータイプだけで世界ナンバー2に成長し、このタイプが多くのユーザーの支持を得たことから、メーカー各社の開発の目がここに集中した。'85シーズンは、需要増を期待して多くのメーカーが参入している。
 サロモンがレーサー用に開発したSX91エキップは、前傾強度を5段階に自在に調節できるマルチフレクション・システム、外傾カントを3段階に調節できる機構を新装備。このほかに完壁なヒールホールドを実現した内部調節機構など、サロモンの独創機構をフル装備、極めて完成度の高いスキーブーツとして前評判が高い。
 独特なワンバックル、独自の足のサイズ測定法など、サロモンがこの分野に投じた波紋は大きい。'85シーズンは継続モデルのうち2機種を除き大幅に価格を引き下げ、新製品2機種を加え9機種を展開する。
 ノルディカはレーシングとジュニアに力をそそいでいる。レーシングは、新機構の外傾角度調整システムを搭載した980をはじめ4モデル登場。ジュニアは5機種すべてニューモデル。レーサータイプから、リアエントリータイプも2機種ある。
 コフラックは新しくCE(センターエントリー)タイプ5機種を出した。レクリエーショナルスキーヤー対象で、着脱やセッティング操作の容易さと快適性、ファッション性が特徴。エアポンプによりインナーのエアバッグをふくらませるエアフィット・システム内蔵モデルもある。
 カベールはステンマルク使用のコンブSLレーシング(アズーロ)をはじめとするコンペティション・シリーズをはじめ、6シリーズ18モデルを展開。昨年登場のコニカのリアエントリータイプCS-350は、シェルが4方向に開放する4RD機構をもつ。このほかにリアエントリー型は2モデルある。
 美津濃は6モデル16カラーのうち、リアエントリータイプ3モデル9カラーが新登場。なかでもCITYは、2万円台のリアエントリーとして数々の特徴をもち、レディスを含む初〜中級者をターゲットに発売。
 昨年トライアル展開したヤマハは、イタリアメーカーの協力を得て、共同開発した4モデルを展開。リアエントリー式もある。
 トラペールもリアエントリー4機種を発売するが、看板はフランス・ナショナルチーム使用のコンペTX-E。
 将来、市場の40%を占める可能性もあるというリアエントリー式スキーブーツの今後には、いろいろな話題が生まれそうだ。

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バインディング

 バインディングはサロモン、チロリアの2強を先頭に多くのブランドがしのぎをけずっている。各メーカーは'85シーズンに向けて、それぞれ新しい機構をもつモデルを発表している。
 サロモンは5ライン13モデル。全方向コントロール機構をさらに発展させたマルチコントロールシステムで、解放とホールドの完壁なまでのコントロールを実現しニューモデルに搭載している。マルチピボットがウイングにかかるすべての方向への力を細大もらさずキャッチしてコントロール、前方、後方、いかなる複合転倒でも確実な解放を行なう。また、まったく手をふれることなくステップイン、ステップアウトできるフルオートマチック着脱機構や、完成度を増したコンペティションブレーキ、踏みこむと同時にブーツをがっちりホールドする3点サポートシステムなど、トップブランドにふさわしい充実ぶりである。
 チロリアは、コンピュー夕制御により設計・製作された90シリーズ6モデルを登場させる。転倒の死角を解消したトータルダイアゴナルシステムを搭載、従来のコンフォートシステムの快適さをさらに拡大し、着脱の容易さ、解放と同時にレバーをリセットできる新コンポジットシステムを装備、さらに白を基調としたハイパーエアロフォルムのニューデザインで登場している。
 マーカーは、数々のレースでの実績を誇るロータマートやM40レーシングなどを継続するほか、ステップイン式の軽量ニューモデル3機種を発売する。
 ゲッツェは、横にリリースするのではなく斜め上方に解放し、より安全性を高める斜軸システムを開発。これとテフロンプレートの使用で滑走時の摩擦解消を実現、危険な前方、後方へのねじれ転倒には無理にひねることなく瞬間解放、強い復元力と低摩擦構造はハードなすべりでも誤解放を起こさない。これらを2モデルに搭載している。
 ルックは、いかなる複雑な転倒でも解放強度をいつも一定に保つセンサー機構が特徴だが、'85シーズンは、これを内蔵した機種を6モデルとしている。
 ホープは昨シーズン発表したニューモデルラインに、超軽量のカーボンバインディングとスポーツモデルを加え、5機種をラインナップ。1セットの重量が161Og、三次元解放のマルチプレックス、フェザータッチでクイック着脱できるフェザーフレックスなどの新機構を搭載している。

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ゴーグル&ポール

 ゴーグルやポールも際立った変化はないものの、新製品品の話題は豊富だ。
 スワンズのゴーグルは、H・ヒンターゼアや沢ロ 学プロ選手、サラエボで銀メダルを獲得したクリステイン・クーパーをはじめ、多くの選手に使用され、日本生まれのインターナショナルブランドとしての評価を高めつつある。
 レーサーに認められた機能をべースに、エキスパートからレディス、ジュニアまで、そのラインナップは幅広い。
 '85シーズンに向けては、コンポ発想の新製品、メリー・メーカーが加わる。これは、カラー違いのサブフレームが1組ついていて、その日の気分でフレームのカラーコーディネートが楽しめる。カラーは流行最先端のイタリアンカラー10色。フレームは上下に分けられるから、ひとりで持てば4通り、2人で16通りの組み合せを楽しめる。フレームとレンズがバラバラになるので持ち運びにも便利だ。
 スコットゴーグルでは、グラディエント・レンズが新登場する。レンズ面のグラデーションが上部からの光線を抑え、雪面を鮮やかに見せ、吹雪や霧、曇天でも、くっきり視界をキープする。また、オレンジ色のティントレンズは、視界をクリアーに保つ工夫として2枚のレンズを効果的に使用し、発汗や体温によるレンズのくもりを解消している。
 カレラも、くもりをパーフェクトに防ぐポラロイドーエバクレアレンズを採用している。
 今シーズン新登場するのは、西ドイツのアルピナ。独自のグレーレンズが特徴。グレーはすべてのカラー、光に対して反応が一定で、神経疲労の度合がもっとも少ない、とアルピナ社ではいっている。
 スキーポールは、スコット、イーストン、ケルマなど専門メーカーブランドのほか、スキーメーカーのほとんどが自社ブランドによる展開を行なっている。海外ブランドも、一部を除いてほとんどが国産品である。
 スキーメーカーがポールを手がけるのは、日本に限ったことでなく、アトミックでも、先ごろポール生産のための専門工場を建設している。
 ケルマは従来のポールでは可倒式ゲートに対応しきれないとして、シャフトが自然に前に出るニューグリップを登場させる。
 ヤマハは、スキーのデザインとコーディネートさせるために全面デザインチェンジ。機能面ではCS77など3機種にISO(国際標準機構)規格をマスターするニューセーフティグリップと、極度に強い力が加わるとはずれるニューセーフティストラップを採用している。
(実業之日本社 SKI'85-1 別冊付録「スキーカタログ」より P-6〜7)

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'95 ニューモデル流行展望

(山と渓谷社 skier SKI'95-1 別冊付録「'95世界のスキー用具カタログ」解説:編集部 より)

冬をもっと楽しくワクワクするための'95モデル流行事情
'95モデルtool_1  新しいスキーシーズンがやってくると、どうしてもニューモデルのことが気になってしまうのはスキーヤーの習性。これがまた楽しいんですね。デザインがお気に入りとか、新機構がおもしろいとか。ともかく興味いっぱいの話題をチェックしてみましょう。


流行色は フルー×イエローで明る〜い気分

 モノトーンの冬山に、明るく華やかな彩りを添えるのがスキーファッション。南の島がそのまま引っ越してきたかのようなトロピカルフラワーがあったり、ひまわりの花畑のような鮮やかな黄色があったり。あるいは飛び抜けてハデな色のスキーやブーツがあったりで、楽しさを演出している。
 カラーに流行が出てきたのはもうずいぶん昔。なかでもここ数年はプリントの流行で、とてもニギヤカだった。で、今シーズンはというと、目立っているのはさまざまなトーンのブルーと、明るいイエロー。
'95モデルtool_2  この傾向は去年からのもの。マテリアルをはじめウエアまでチラホラとブルー&イエローが存在を主張していたが、去年はまだ少数派。今年になってやっと強い勢力になったというところ。特にヨーロッパでは黄色が勝負の色。ウエア中心にかなりパワフルな展開を見せているとか。この影響も決して見逃せない。
 ただ、日本のスキーウエアは実はスノーボードの影響が強くて、目立つのはダークでアーシーな色。これに対してマテリアルのほうは、むしろちょっと以前のレーシングカラー系統。つまり強さ、スピード感をイメージさせる赤、黄、青といった原色系。そのなかでも今年を象徴するトレンドカラーがワンレーとイエローということ。
 基本的に機能にはなんの関係もない流行色。スキーヤーの好みに強く左右されてしまう。それなのに毎年のように流行色があるというのがおもしろい。真っ先に流行の色を取り入れて最先端を主張するか、あるいは他人と同じのはイヤだと、独自性を主張するか。考えるのも楽しみだ。

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今年はキャップスキーのブッチギリ!?

'95モデルtoolski_3 '95モデルtoolski_4  スキーというアイテムでいちばんに目立つ話題は、キャップ構造の普及だ。モノコックという新しし構造のスキーが登場してブームが始まり、たった数年でスキーの構造の主流になったことはオドロキでしかない。しかも今年は、レースには向かないと思われてきた常識を打ち破って、複数のメーカーからレーシングモデルが多数登場している。
 クルマ世界でこそ知られたモノコックという構造が、これほど画期的にスキー構造の変化を呼び起こすと想像した人は、たぶん多くはないはずだ。しかし実際はすでにスキー構造の一大勢力。サンドイッチ、ボックスと並ぶ3大構造となっている。
 これまでは消極的だったトップレーサーによる使用も開始されているから、性能も信頼性も飛躍的に加速されていくだろう。そこからのフィードバックも増えるから、死角と思われていた部分も早い時期に改良されていくはず。キャップスキーの未来はかなり明るいといえそうだ。

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スノーボードの元気にゃビックリです

'95モデルtoolWear_5 '95モデルtoolWear_6  最初はスキーヤーの天敵、みたいに嫌いだった人も多いはず。それが今ではゲレンデ'イチバンの元気者のスノーボード。ついに今年はスキーの流行を左右するまでの、あなどれないヤッになってしまった。
 '95シーズンの冬を飾るスキーファッションのラインナップを見ていると、デモラインの数が減り、代わりにボードラインや、ボードテイストのウエアの増加が非常に目立つ。
 ウエストの絞りがなくなってサイズが非常にルーズになり、ヒザやヒジ、ヒップに補強生地がパッチされ、おまけにシャツやベストをレイヤード。といった提案がすごい数で登場しているのだ。
 思えばプリントの流行もボードが最初だった。サーフィンの影響を色濃く受けるボードがまだまだマイナーな存在で冷たくあしらわれ、それならこれでどうだ!とばかりにトロピカルでやたらハデなファッションを主張していたのは6、7年前。それが非常にミーハー中心にうけて、スキーウエアが真似てブームをつくり、その流行が一段落したあと、次にきたのがボードファッション、てな図式となっている。
 この傾向がどこまで続いていくのか、興味は尽きない。

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背中にスジが入ってブーツはパワーもりもり

'95モデルtoolboo_7 '95モデルtoolboot_8  メカニカルなアイテムだけに、これまでも無数のアイディアが投入されてきたブーツ。最近でこそシンプルなフロントバックルモデルの人気が定着しているが、新しいトライヘの情熱がなくなった訳ではない。
 最近よく目にするブーツバックの補強パーツは、そのなかでも強力なニューカマー。単なる後傾からのリカバリー機能でなく、スキーヤーのパワーをより効果的に伝達するためのスタビライジング構造として注目されている。
 剛性が高い硬いプレートを装着する方法と、シェル構造そのものを立体化してブリッジ状にするものとがあるが、どちらもスキーヤーの評価はなかなかいいようだ。

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ジャンプいっぱ〜つ!のモーグル人気ますます好調

 日本独特のスキーイング=デモスキーが、ここしばらくスキーシーンをリードし続けてきた。正確に華麗に滑ることを、イチバンの目的にしたデモスキー。


 そのスタイルはマテリアルやファッションにも大きな影響を与え、外国製マテリアルにもジャパンバージョンの開発とラインナップをうながし、レースウエアともリゾートウエアとも違う個性的なファッションを確立してきた。
 しかし、そのブームもさすがに落ち着き始めている。そして代わって関心が高くなっているのがコブ、新雪、急斜面などを滑る、これまでにはなかったスキースタイルを過激に主張する、エクストリーム&モーグルというジャンル。
 デモがカタチを大事にし、比較的ストイックなスキーであるのに対して、エクストリーム&モーグルは自由で陽気、目立ちたがり精神いっぱいなのが特徴。ともかく楽しく滑りたい、思いっきり自分の限界を飛び超えてみたい、という気持ちがベースになっている。
 なかでも最近の注目はリレハンメルからオリンピックの正式種目となったモーグル。
 時には背の高さを超えるほどのコブが並ぶ斜面を、できるだけ速いスピードでまっすぐ滑り降り、途中で2回ジャンプのパフォーマンスを入れるという競技で、この人気が急上昇するにつれて、マテリアルにも数多くのモーグルモデルが登場してきている。
 特に充実度が高いのはスキーのモーグル。エクストリームと合わせて多数のラインナップを揃え、かなりのボリュームとしたメーカーも増えている。そのほかブーツ、バインディング、ポールなどのアイテムでも専用に設計、デザインされたモデルが増えているのが今年だ。

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楽しけりゃいいんだ。おもしろスキーが増えている

 デモ人気が長い間続いてきたが、その一方これに飽きたらないスキーヤーも少数ではなかった。確かにスキーは、テモタイプ人気がずーっと60%近いという状況か続いている。逆にレーシングモデルは全部合わせても30%に満たないレベルまで低下。これに代わってエクストリーム&モーグルモデルが10%を超える人気を得て勢力拡大の気配だ。
 同時に、もっともっと気楽に、自由にスキーを楽しみたいというスキーヤー向けに、各種の変わり種スキーが登場して話題となっている。
 コンベンショナルなスキーに比べて、サイドカットが非常に深くしてあり、技術レベルがそんなに高くなくてもカービングターンが楽しめるスキー。しかもショートターンがラクラクOKとか。トップとテールの幅も、普通より1.5倍くらいに太いスタイルは、目立つという点でもおもしろい。
 また、幅が2倍近くもある新雪や深雪だけを対象としたスキー。サイドカットもあまりなくて、まるで細めのスノーボードみたいなフォルムは個性もたっぷりだ。
 さらにごくごく短く、ファンスキーとして人気を得た超ショートスキーもある。モノスキータイプまで出ていて、このファンスキーのジャンルはなかなか元気がある。

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ブーツの性格はフロントとタングに出る

 どんなタイプのスキーブーツでも、スキーヤーのパワーをスキーに伝達したり、バーンからの情報をスキーヤーに伝えたりするのに重要な役割を果たすのは、タングとシェルカフのフロント部分だ。
 以前はこの部分の機能にはあまり着目されてなく、特に工夫のある設計は見られなかった。しかしスキーヤーが前傾を強めたとき、シェルがそのパワーを受けて変形してしまうとせっかくのパワーがシェルの変形に吸収されてロスが出たりと、スキーヤーの意思が十分に伝わらないことがある。伝達スピードにも遅れが出るのでレスポンスが悪くなったりすることもある。
 そこで最近のブーツはタングやフロントカフを工夫。フローティングタイプとしてスムーズなパワー伝達を図ったり、リブを入れてダイレクトに力がスキーに加えられるようにしたりしたものなどが多数出てきた。
 自然にヒザが内側に入るようにしたり、内側に偏ってパワーが伝わることでエッジングの効果を高めるのを目的として、非対称形状のタングやフロントカフを持つブーツも目立っている。
 スキー技術のレベルが高くなるにつれ、ブーツのフロント機能の重要度は高くなる。それに対応したシステムということだ。

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スキーのアタマとオシリは最近、不思議なカタチ

 スキーの性能を決定する要素は非常に複雑だ。全長方向のフレックスの硬軟と分布、ネジレに対するトーションの硬軟、回転性に関わるサイドカット、操作性に影響する長さ、滑走性を決めるソール材質、エッジング効率を高める振動及収特性。こうした要素が主なもの。これをスキーヤーの技術レベル、滑る目的などに合わせて組み合わせ、そのモデル固有の性能と性格のスキーができる。
 そんなスキーのデザインに大きな影響を与えたのが、キャップ構造。立体的なフォルムが自由につくれることから、今はあらゆるカタチによる性能アップが図られている状態。そこに加わるように最近目立っているのは、ティップ(スキー先端)とテールの構造の個性化。


 コンベンショナルモデルでは、単純にショベルのような形のティップに、少しカドを落として丸めたテールというのが定番。これが現在の進化型のスキーでは、形状も構造もさまざまとなり、別素材のプロテクターが付いたり、振動吸収機能を付加したりとおもしろいものが多い。
 なかでもティップに装着したプロテクターは、軽量化、振動吸収、保護を主な目的として、内部構造に組み込むのが一般的だが、スキーの特徴のひとつ。
 アタマとオシリに注目してスキーを選ぶ。これもひとつの方法だ。

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最先端素材がスキー用具の性能アッ7を加速

 プラスチックとFRPの登場が、スキー用品の性能と耐久性を飛躍的に高めた。さらにその性能を高いレベルに押し上げる決定打として登場してきたのは、日常生活でも最近は身近な存在の、新素材と呼ばれる先端素材。
 カーボン、ボロン、ケブラー、チタナル、サイファー、ニューセラミック。引っ張り強度か高い。物理的安定性に優れている。弾性率が高い。振動抑制効果がある。などの優れた特性をもつことで注目されているマテリアルだった。
 スキーの滑走スピードが上がり、ターン時のエッジングのホールド性への要求が高まったことがそのベースになっている。ゲレンデの整備が進んだことにより、一般のスキーヤーでも時速60qは軽く出るようになった状況も背景にある。
 スキー以外のアイテムでも、幅広く採用されてきたのが今年の特徴。とり訳シャフトに新素材を役人してきたポールが目を引く。軽量でバランスがいい、空力特性がいい、フォルムが新しいなどの特徴がスキーヤーの購買欲をそそりそうだ。
 ブーツやバインディングにもかなりの範囲で使われ始めている。強度をアップする、軽量化を図る、というのが目的だ。

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デザインがワ〜キレー! 性能がわ〜スゲー!

 デザインというのは広い意味を含んでいる。色を決める。模様を入れる。これもデザイン。性能をアレンジする。強度を決める。素材を選ぶ。広く考えるとこれもデザインになる。
 ふつうには、基本的な構造と性能の設計を除いたあとの、すべての意匠がデザインと考えればいいだろう。そのデザインが、スキー用具において大きなポジションを占めるようになってきたのは、まだそんな昔ではない。
 少し前まで、デザインというのはスキーでもブーツでも色で選ぶといったことぐらいだった。それが人間工学に着目したり、空気力学を考慮したりということにより、機能をデザインすることへと変化した。そのイチバンの変化を反映しているのは、ブーツ、バインディング、ポール、サングラスといったアイテムだ。
 まず目立ってデザインが変わったのは、表面のデザインがエアロフォルムや、フラッシュサーフェスを目指して曲線、曲面が多用されていること。そしてブーツのバックルが丸くなり、ゴーグルレのフレームが曲線になり、バインディングの外観も丸っぽくなった。空気抵抗の影響を考えた結果だ。
 顔へのアタリが自然でソフト。長時間の着用でも疲れず視界が広いゴーグルやサングラス。人間の足の動きや形状をよく考えてつくられた快適さが保たれたブーツ。グローブをした手でも自然な握りができるポールのグリップ。
 そうした、人間が使用することを第一の前提としてデザインされたアイテムか増えたのも、今のマテリアルのもうひとつの特徴。感性や好みに訴えるデザインではなく、もっと実用上のデザインだ。

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ラクラク大好き、の人たちにはこのフーツ

 現在、スキーブーツの主流となっているフロントバックルタイプは、好みのフィット感が得やすい、ダイレクトなエッジング感とレスポンスがある、自然な前傾パワーをかけられる、などの特徴がある。
 しかし大きな欠点がある。構造的な特徴から、着脱がきついのだ。スキー場の寒さで硬化したシェルが、この難行をよりツライものにする。
 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の中で、自動的にヒモが締まるスニーカーがあった。スキーブーツにも同じようなシステムを搭載したプロトタイプが登場したことがある。実用化はまだ先だろうが、将来は近いものが登場するだろう。
 そこまではいかないが、現在のブーツもイージーな着脱、快適な着用感をテーマにした開発は急ピッチ。
 リアエントリータイプのラクラク着脱に、フロントバックルタイプの性能を盛り込んだモデルが各メーカーからラインナップされている。ミッドエントリー、センターエントリーなどと命名されていて、ホールドにはフロントバックルが機能を果たし、着脱にはカフ開口部が大きくなる構造をもつのが共通した特徴。
 スキーイング・ポジション、歩行&休憩ポジションの切り替えがカンタンにできる機構も、最近は常識的。
 滑走時にヒザを少し前に出したポジションとなるように、通常は前傾
をつけているスキーブーツ。これが滑っていないときには、実はスキーヤーには苦痛の姿勢となる。これを防いで、歩行時、休憩時は直立でき
るようにしたのがウォーキングモードとかリラックスモードとか名付けられたシステムだ。
 スキーはできるだけ疲れずに、気軽に楽しみたい。そう考えるスキーヤーに最適のイージーエントリー、リラックスモードだ。

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未来は楽しいゾ、の予感。新しい試みに期待大

 工業技術の進歩には終点というものがない。スキーのマテリアルも同じ。今のスキー、ブーツ、バインディングなどどれも完成度はかなり高い。滑っていて、強い不満を感じるレベルの製品は皆無だ。それでもより高い性能、より快適な使用感、より美しいデザインを求めて新しい試みが投入されてくる。なかには、未来のスキーシーンはもっと楽しく、おもしろいものになりそう、という予感をもたせるニューモデルも出ている。
 今年も1000を超える種類のマテリアルがラインナップされた。そのなかにもやはり興味をそそられるアイディアがあった。例えばブーツの新しいセンターエントリーシステム。これまでも数メーカーからイージーエントリーの機構は提示されているが、それとは違うアプローチ。アッパーカフの設計を新しくしたもので、前傾角度をフリーにする機構も備えていて、徹底したイージースキーイング志向となっている。
 パーソナルフィットを目指した、新しいタイプのインナーブーツも出ている。温度を上げることで何回でも再フィットが可能とか。インナー単体で別売りされている。
 バインディングに最近目立つ、新しいシステムの搭載も注目もの。スキーへのパワー伝達を積極的にコントロールする機構で、より高い滑りを目指すスキーヤーが対象。高い位置からのエッジングと振動コントロールを目指すプレートとともに、バインディングの機能に新しい役割を加えている。
 そのほか、デザインの新しいサングラス、テーパーが付いたカーボンシャフトのポールにも期待。
(山と渓谷社 skier'95-1 別冊付録「'95世界のスキー用具カタログ」より)
 撮影:萩原 明、田口信治 解説:編集部

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