トライスキーって、な〜あに

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 初心者のスキー指導に対する
     補助用具使用に関する一考察
 (2001/秋 発表)

磐梯ひじかたスキースクールの赤馬マーク
   注:以下はほぼ原文のままですが、文章の校正と、レイアウト上の校正で、
     ごく一部の手を入れさせていただいています( 2001/ 3/ 9 土方あきら)。


1. はじめに

 キャンプにスキーを導入する意義は、スキーは短期間で上達が見込め、そして上達を自己評価でき、自己実現を身近に感じられるスポーツであるからである。
 私が主宰するERI(Educational Recreation Institute)でも、3月のウィンタ−キャンプの中にひとつのプログラムとして、スキーを導入している。
 このスキー指導には、生活を共にする班付カウンセラーが当っている。他のプログラム同様に、その体験の過程や振り返りを大切にする為には、カウンセラーが担当することが良いと考えている。


 しかしながら多くのキャンプにおいては、カウンセラー全員がSAJ・SIA等の指導者資格を有するということは少ない。
 それらの指導法は体系化しておらず、個人差があり、指導力不足から、子供たちのスキー技術の習得にバラツキがあるのが現状である。


 この問題を解決する一つの方法として、初心者のスキー指導における補助用具(トライスキー 資料1)の導入について検討した。
 補助用具の導入によって、限られた時間の中で技術を習得し、初心者の子供に安全で楽しいスキーを伝え、そして一定のスキー技術習得に要する時間を短縮することにより、スキーをキャンプに導入する新たな可能性(展開)を広げるものと考え、その可能性・問題点について検討した。

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2.調査方法

(1)調査の対象
 このデーターは、磐梯ひじかたスキースクール(資料2)における小、中、高校の生徒を対象とした。初心者指導を担当したコーチの内29人に対し、福島県猪苗代スキー場において2000年1月18日〜25日にアンケートを実施した。
 コーチの平均年齢は32才であり、コメントのみ記入したものが5名あり、そのため有効回答は24通であった。
 班の構成は初心者5〜14人であり、この内生徒1人〜半数までの範囲でトライスキーを利用した。
 基本的な歩く、上る、止まるのレッスンを通常に行った後、どうしても恐怖心が先にたってしまうなどの理由で、トライスキーを使用することをコーチが決断し、装着の提案を生徒にすることが前提であった。
(2)対象とした講習の状況
 今回調査を行った猪苗代のゲレンデは、初心者に適した緩斜面がほとんどなく、複数の生徒を受け持った場合には、どうしても生徒のレベル差、脚力の差などがレッスンに影響を及ぼした。
(3)アンケート用紙の概要
 「はい」「いいえ」の2件法、「はい」「いいえ」「どちらともいえない」の3件法、自由記述法、選択法を内容に応じて使用した。
 複数回答可とした項目は、回答者(指導者)1人に対して対象者(生徒)が複数である為であった。

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3.結果と考察

 「導入によって指導面で助けられた」、「導入して良かったか」という2つの質問に対して、両方とも良かったという回答が24人全員から得られた。
 「利用した生徒がトライスキーを一度外した後、斜面又は進度に応じて再度使用しましたか」の問いに対して、66.6%が再度使用したと回答した。その原因として、初心者に適した斜面が少なかったことが上げられる。
 
Q:プルークファーレンの指導中、どのような段階で導入しましたか。(複数回答可)
止まれない11人45.8%
ハの字に開けない1770.0%
斜度が、技術を超えている生徒に対して28%
 「一度トライスキーを外した後 再度利用した」という回答16人(66.6%)の内54%が、導入した当初から止まれない、ハの字に開けないの両方の要素を持っていた。


Q:プルークボーゲンの指導中どの段階で導入しましたか。(複数回答可)
スピード調節ができない2人
その他(曲がれない、ハの字がくずれる)3
班の中にレベル差がでた10
班の人数が多かった3
個人的な骨格等の理由4
恐怖心が強い等、性格的な理由12
心身に何らかの障害があった2
スキーのトップがテールと一緒に開いてしまう18
長距離の滑走を楽しむ為4
練習のバリエーションとして1
新しいゲレンデに行った時0
その他として記述された点
イ) .  恐怖心の強い生徒を、バックボーゲンで滑りながらスキーの両先端を押さえた場合と違い、指導者が子供の顔を見ながら滑ってあげられることで、精神的に安定した滑走を可能にし、円滑に指導できる。
ロ) .  どうしてもスキーの先端が開いてしまい、ハの字の形状を保てない子供の場合、トライスキーの導入によってスピードコントロールが容易になる。
ハ)  .  班の大多数が長距離を滑れる段階になったとき、上達の遅れている子供に対しトライスキーを装着すると、他の仲間と一緒に滑ることができて上達し、トライスキーを外した時にレベル差が無くなっている。

 トライスキーは、ちょっとした壁を乗り越える為の通過点にある、踏み切り台のような物と言える。
 上達の遅れている少数の子供に手をとられすぎると、他の子供の上達や楽しみを妨げる恐れがあるが、指導経験の浅い者でも両者の上達を促すことが容易になる。
 この事が、利用者の以下の利用時間によって分かる。
Q:同じ対象者がどの位の時間利用しましたか
利用時間
(リフト使用以前)
5分  2人15分  1人
リフト利用本数1本  7人2本  5人4本  2人5本  4人未記入  3人

  リフト2本以内で外している例が、過半数である。このことからも分かるように、トライスキー使用はこれに依存するのではなく、上達の通過点として、指導者の努力と工夫、そして本人の努力によって乗り越えられてきた部分に対する新たな対応策といえる。


Q:外そうと声を掛けたときの反応は如何でしたか (複数回答可)
抵抗無く同意した9多少こわがった10嫌がった4
自分から外したがった9その他2
 外すタイミングは肝心なポイントである。
 トライスキーに頼りきってしまっている子供の場合、使用しなくても滑れるという事を「理解させて外す」という努力が指導者に求められる。
 外すのに適当な斜面を選ぶ事も含めて、その子の状態を適切に判断することが大切になる。そして外した時の不安な気持ちを理解し、外すことができた時に誉めることも重要な援助となる。


Q:導入した結果何か困った事があったらお書き下さい。
Q:トライスキーのお勧めポイントがあったらお書き下さい。
  以上2項目の自由記述から得られた、利点・改善の必要がある主な点を、以下に記す。
   ハの字の形状を保てない子や体重が多い子には、非常に有効である。ハの字の形状を体得できる。 
   一部の子供に装着することによって、その子の進度が遅れていることを印象づけてしまう危険性がある。
   滑れるという自信を持たせてあげられる。
   不意に外れた時に、かえって恐怖心を感じる。
   年齢が小さい子ほど、脚力が発達していない為に、雪の抵抗を受け止めることを覚えるのに時間がかかり易い。トライスキーを使うことで、それを体験できる。
   リフト乗車の際や転倒によって外れた場合、装着に手間取る。
 特に転倒の場合には、指導者よりもその生徒がゲレンデ上部にいることが多く、必ずその場まで駆け上がらなければならない。
   トライスキーによって、正しいポジションやスキー操作の習得が可能になる。
トライスキー画像4
参考情報:
 一般的に指摘される問題点として、ゲレンデを登る体験時間が短縮されるので、上り方、歩き方、内反させる「力」が、多少この段階では劣るかも知れないという危惧がある。
 しかし「これらは、以降に十分補える」と磐梯ひじかたスキースクール校長土方氏は述べていた。
参考情報:
 調査対象に知的障害者の中学生の団体レッスンがあり、この時の初心者12人は全員トライスキーを利用し、2人のコーチによってレッスンを行った。その結果として、安心して滑れるということで自信をつけ、喜ばれた。

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4.アンケート結果から

* 指導者が一人で大人数の初心者を受け持つ場合、
 班の中にレベル差が出てしまった場合、
 どうしても止まる事が出来ない子供が1〜2人いる場合でも、
  トライスキーの導入により、他の子供と平等に指導する事が容易になる。
* 脚力の劣る子供にとっては、度重なる踏み上げ練習は疲労と苦痛を伴う。それによって、スピードコントロールが出来なくなる、スキーや講習が嫌になる、などの恐れがある。
 ところがトライスキーの装着によって、いち早くリフトを使った練習を展開できる。
 キャンプにおいては初心者班の中に、中高生男子と小学校低学年の女子が一緒になることもよくある。そのような場合にも、脚力差が問題とならず、楽しむ時間を十分に確保でき、講習の中で異年齢交流を計っていくことが可能になる。
<使用に当っては、以下の配慮が求められるであろう。>
* 上達のきっかけとして利用するので、正しいスキー操作を体得したら外す。
 少しづつ斜面変化などに応じて、適宜に外した状態に馴らして、外す方向へ促す。
* 転倒した際や、無理な力が瞬間にかかった場合には、外れるものである。
 誤解放を防ぐために、装着した事によるスピードオーバーをさせない。
* 装着する子に、劣等感を持たせない工夫が必要である。

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5.まとめ

 初めてスキーをする子供達に対して、キャンプが、彼らと「スキー」との出会いの場であって欲しいと願っている。それを援助するため、トライスキーは有効であると考える。
 トライスキーは、実力では滑走不可能な所へ行く為の道具ではないし、指導者が手抜きをする為のものでもない。
 苦労して本人がカウンセラーと共に乗り越えるべき経験、そして乗り越えて初めて得られる貴重な体験も多くある。そこから自分に内在する無限の可能性と出会うことも、キャンプに参加した子供たちに提供できる大事な点であると考える。


 しかし困難な状況に陥り、スキーが嫌いになってしまう恐れがある場合は、その段階を多少割愛しても良いのではないだろうか。トライスキーの導入は、キャンプ プログラムとしてのスキーの在り方(人間形成に役立つスキーの経験)を実現するよい道具であると考える。
 トライスキーの使用は、スキー技術習得のほんの通過点であり、使ったことも忘れてしまっている程であり、子供の達成感を損なうようなことは無いと考える。


 私が主宰する団体においては、キャンプ初日に生れて初めてスキーをした子供も、何年も経験を積んでいる子供も、毎年、一緒に4日目午後は2時間をかけて菅平の8つのゲレンデを滑っている(資料3)。トライスキーの導入により、新たな可能性を広げることができると考えられる。
 その一つとして早目の上達により、上部のゲレンデに行き、下部では見ることの出来ない冬山の景色を初心者も手に入れることが出来ることも、大きな利点であろう。

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6.謝辞

 この報告に当たって、1団体における例だけでは不充分と考え、トライスキーの情報提供にふさわしいものに近づくため、磐梯ひじかたスキースクール(福島県猪苗代スキー場内)のご協力を得ました。
 磐梯ひじかたスキースクール校長土方あきら氏、並びにスタッフの皆様に、心よりお礼申し上げます。




 補足:今回調査対象とした福島県での講習で使用したスキーは、全て先端の幅の広いカービングスキーであった。トライスキーの使用により、雪を削っていく滑り方を習得できるのでカービング要素を引き出した滑りができる。

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資料1:トライスキーとは

 スイスTRY-SKI SA社の商品で、輸入元はケイアンドケイ工業(株)(現・コンケスト(株))。
 形状は長さ145mm 幅30mmでスキーの両先端を連結させるプラスティック製の小型装置。初心者、初級者がプルーク・ファーレン、プルーク・ボーゲンを習得するための補助装置。定価 3,780円(2005年02月現在)。
 特徴:球状のユニバーサル・ジョイントなので、スキーの先端を連結した状態でスキーのテールの開き幅を自由に変えることができる。
 その結果、利点としてテールの開き幅に比例し、自動的にエッジングが生まれ、その角度も連動して変化する。転倒時には、ほとんどの場合ジョイントの連結が外れる。
 *土方あきら氏HP(http://skis-hijikata.o.oo7.jp/tryski.htm)より一部抜粋

資料2:磐梯ひじかたスキースクール

 磐梯ひじかたスキースクールは、10年に亘りトライスキーを日本で最も多く(常時80組を運用)指導に導入しているSIA(社団法人日本職業スキー教師協会)のスクールである。
 トライスキーを導入した講習は、「生徒に満足のいく上達を経験してもらい、それを各学校(小中高)が評価していると考えられます」。
 なお、トライスキーは同校の依頼により輸入が実現されている。


資料3:〔具体例〕 以下、私が主宰するキャンプの実施例を紹介する。

                          於:菅平表ダボス(3月)
  小学校1〜2年生 1班6人程度の初心者に対してトライスキーを2つ用意し、リフトは全て高速クワッド(4人乗り)を利用する。
 1レッスン目(初日午後):2時間の講習の中で踏み上げによる練習の後、リフト1本乗車。滑走が困難な様子を示す子供には、トライスキーを装着して下山する。
 2レッスン目(2日目午前):初めのリフト2本迄に、トライスキーを使用していた子供も外す。リフト4本乗車、2コース使用。
 3レッスン目(2日目午後):プルークボーゲンで様々なゲレンデ(表・奥・裏ダボス)を滑りながらの練習。リフト5本使用。
 4レッスン目(3日目午前):リフト5本使用。プルークボーゲンのバリエーション練習を行う。
 5レッスン目(4日目午前):リフト10本使用。一部の子供がシュテムターンの段階に入る。
 6レッスン目(4日目午後):上級者を含む他の班と共に、菅平の8つのゲレンデを滑る。

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筆者の高林 千尋さんの略歴など


子供のキャンプを主催する団体である「教育レクリエーション研究会(E.R.I)」主宰(東京都キャンプ協会 加盟)。
文部大臣認定社会体育指導者ディレクター 1級
(社)日本キャンプ協会会員
SIA((社)日本職業スキー教師協会) GOLDメダル / 指導資格 ステージ1
SAJ((財)全日本スキー連盟) 1級
他、委嘱事業の講師。
(以下は、本人からのコメント)
 春、夏、冬休みに小中高校生を引率して、キャンプをしています。
 野外教育を通して、子供達に自分の持つ無限の可能性を信じることや、自分と違う人(国籍・ハンディキャップなど)に対する理解、自然に対する理解と愛情などを伝えたいと思っています。
 私の娘は、浪人中に某スキースクールで、中学のスキー教室で自閉症や、体にハンディのある方、お母さんをGSの大会中の事故で失った4才のお嬢さんなどを担当させて戴いて、教育学部への情熱を高めました。その時に使用したのがトライスキーだったのです。
 その時、娘から聞かされたトライスキーの効果は、私にとっては魔法のような話でした。

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