◇灰色のリゾート開発…
「10年間で1,100億円を投入する」という壮大な計画だった。開発・運営する「磐梯リゾート開発」は、元大蔵省銀行局長・徳田博美をはじめ、大物大蔵OBを役員や後見人として迎え華々しくスタート。
しかし、バブル経済の崩壊とともに、出資企業は相次いで撤退、開発は中断を余儀なくされた。
1998年1月、記者会見に臨んだ磐梯リゾート社長・鈴木政英は、「700億円を超える負債の金利が払えず不良債権になっている」
と発表した。
開始から10年。壮大なリゾート計画は不良債権の山を作り、頓挫した。
◇不可解なカネの流れ
この記者会見では、磐梯リゾートから、同社の株式47%を所有する筆頭株主で、ゴルフ場開発・運営などを手がけるテクノ・グリーン(当時の社長・本橋栄一)への不可解なカネの流れも取り上げられた。進出企業の撤退が続く状況の中、唯一テクノ・グリーンにだけ特別清算金が支払われたからである。その額、実に56億円超。92年6月のことである。
「適正価格で清算し協議離婚した」
鈴木はこう答え、56億円が妥当な“手切れ金”ということを強調した。しかし、その詳細、またなぜ1社だけに特別清算金が支払われるかについての明確な説明はなく、ただ、
「詳細こついては把握していない」
という言葉を繰り返すだけだった。
なぜテクノ・グリーンただ1社に56億円もの巨額な資金が支払われたのか。
その会社登記簿の役員欄を眺めると、磐梯リゾートのそれと重複する名前を数多く見つけることができる。
小林政雄(元広島国税局長)、中尾博之(元大蔵省理財局長)、村山正祐(元大蔵省大臣官房審議官)、そして徳田の実弟、良次などの名前である。もちろん、在任期間などは異なるものの、この符合は何を意味しているのか。
不良債権を抱える企業の役員を務め、一方でその企業から56億円もの巨費を“手切れ金”として受け取った側の役員も務める図式が、読み取れる。
テクノ・グリーンは深手を負うことはなかった。両社の役員を務めていた大蔵OBたちには、かなり高額な役員報酬が支払われている。
磐梯リゾートだけでも、代表取締役会長だった吉瀬維哉(元大蔵省事務次官)には年間2,400万円。小林には年間3,000万円。中尾には年間960万円。そして、3カ月間しか相談役を務めなかった村山には、月額150万円が支払われたという。
こうした大蔵0Bを集めては、自らも肥え太ったのが、徳田だった。
◇徳田の巧妙な集金システム
しかし、徳田のダミーとも言える実弟が、役員として高額な報酬愴得ていたことが物語っている通り、親族を巧妙に配置する用意周到な集金システムを徳田は作り上げていた。それは、徳田とテクノ・グリーンとの関係を見れば一目瞭然である。
ゴルフ場の建設、運営を主たる業務にしているテクノ・グリーンの傘下には、ゴルフ場「セントフィールズゴルフクラブ」、ゴルフ会員権販売の「エクセル」、そしてゴルフ場建設や会員権販売の「パンニヤプランニング(96年にパンニヤに変更)」といった子会社などが並んでいる。
例えば、セント・フィールズゴルフクラブ。会長は橋本栄一。そして、このゴルフ場のゴルフ会員権を販売したのがエクセルだった。
徳田は代表発起人に名を貸す条件として、実弟をその役員に据えさせた。さらに、実際のゴルフ会員権を販売したのはエクセルにもかかわらず、徳田の実母ヨシが代表を務めていた徳田のファミリー企業「ナナ」に、総販売収入の8〜10%が名義料として振り込まれる仕組みも作り上げた。
こうした錬金システムを構築できたのも、大蔵官僚という信用度、そして行政と業界への絶大な影響力があればこそだった。こうしたことへの見返り、リベートだったと考えれば、すべては理解できる。
しかし、徳田ファミリーのカネヘの執着心は、これだけにとどまらない。
ここに大蔵官僚に嫁いだ徳田の娘、宮内みどりの93年分の「給与所得の源泉徴収票」の写しが残されている。
この源泉徴収票によれば、宮内は監査役などの名目で3社から額面合計、1,329万5000円の所得を得たことになっている。
バンニヤプランニングから給与・賞与として650万円。そして、もう1社からは監査役の報酬として同じく650万円を受け取っている。山口県田万川町にある「サンタス」という会社である。
前号でも触れた、孫正義の父三憲がリゾート開発目的に設立した会社である。自ら代表取締役を務め、息子2入も役員などに名を連ねる、同族会社に近いものだった。
◇父三憲も“悪魔の饗”に
以下、スキー場と関係がないので略。
◇登記簿に並ぶ大蔵OBの名
サンタスの登記簿には、興味深い名前が記されている。代表取締役に孫の父親、安本三憲。同じく取締役には長男正明。監査役には三男の正憲が並んでいる。
さらに取締役には福岡銀行(現福岡シティ銀行)OBでパチンコ店を経営する三憲と銀行員時代に取引関係を持ち、サンタスの初代社長に就任する古川武男の名前が並ぶ。
ぞして徳田をはじめ大蔵OBたちが食い荒らした、磐梯リゾートを彷彿させる人物たちの名前が登場する。
本橋栄一(取締役)、宮内みどり(監査役)、そして角谷正彦(取締役=大物・大蔵省OB)。
本橋はテクノ・グリーンを頂点として傘下にグループ企業を抱え、徳田の錬金術の中心的な役割をした徳田の朋友であり、宮内が徳田の実の娘であることは再三述べた通りである。
徳田の意図は誰の目にも明らかである。登場人物を見れば、田万川町のそれは磐梯町を焼き直ししたとしか思えない。
以下は、スキー場と関係ないので略。
日経ビジネス 2001年1月8日号・連載ノンフィクション 「幻想曲」孫 正義の軌跡と奇跡
児玉 博氏著(ノンフィクション・ライター)より、一部要約をさせていただきました。筆者の膨大かつ詳細な取材などなどに対し、心から敬意を表します。
本来のスキー場の開発費の内、1/3ほどが道路や河川対策などの非収益部門にかかったと耳にしています。それだけでも、採算性は?の状態なのに、巨悪に食い荒らされたアルツ・スキー場の再建は、、?(土方あきら)
そしてついに民事再生法の適用申請を、本日にも行う予定です(2002/10/16日)。
詳細は、すぐ下の項に続きます。