判例紹介:スノーボーダーとスキーヤーの衝突事故
神戸地裁平成九(ワ)1845号 判例時報1696号参照
【事故状況】
スキーの初心者であるXが初級者用ゲレンデを滑走中、上方よりスノーボードで滑走してきたY に衝突され、左下腿骨骨折の傷害を受けた。
【それぞれの主張】
X:
Yは15メートル離れた地点ですでにXを認識しており、スノーボードの上級者であるYは、衝突回避動作に入るべきところ、前方を注視せず猛スピードで初心者用ゲレンデを滑走したのであるから、全面的に過失がある。
Y:
15〜20メートルの距離でXに気づき、進行方向をXとは逆に変えたが、その後見失ったため回避できなかったものであり、さらに、Xは上方からの滑走者がいないことを確認すべきであったにもかかわらず、衝突直前までYの接近に気づかなかったことは安全確認義務違反であり、Xにも過失があるとして過失相殺を主張。
【判決の概要】
スキー場においては、上方から滑走する者に前方を注視し、下方を滑走する者の動静に注意して、その者との接触・衝突を避けるべく速度および進路を選択して滑走すべき注意義務があるとして、Yの主張をいずれも退けた。
∞∞∞∞ スキーヤー・スノーボーダーの事故における賠償責任のポイント ∞∞∞∞
原 則 :上方から滑る者の過失が圧倒的に大きい。
修正要素:ゲレンデの混み合い方、見通しの良否、能力・技量に応じたゲレンデの選択の有無、スキーヤー・スノーボーダーとしてのマナー遵守。
下方にいても、ゲレンデの中央付近で長時間立ち止まっていた場合や、転倒してもなかなか立ち上がらなかったり、あるいは、混雑時に斜滑降で斜面を悠々と横切ったり、合流地点での飛び出したり等は、
過失を問われる可能性があります。
◇参考リンク
- ◇スキー安全性・危機管理の小部屋内、判例集には多くの凡例があります