福岡市にある屋内型スノーボードゲレンデ「スノーヴァ香椎」。
1999年10月のオープンから半年間で約5万人の入場者を集めたが、1年たった昨年10月〜今年3月までの6カ月間は半分の2万6千人に落ち込んだ。ゲレンデを運営するスノーヴァの大塚政尚社長は、
「スノーボードブームが去ったことが痛手だった」と肩を落とす。
■ 新規受注、昨年はゼロ
スノーヴァは特許を持つ人工雪を使用。
95年からスノーボードゲレンデの建設を始め、ゲレンデは9カ所まで増えた。しかし来客数の減少で、毎年1件はあった新規の受注が、昨年はゼロに落ち込んだ。既存施設の不振を見て、「建設を検討しでいた顧客が発注をとりやめた」(大塚社長)からだ。
受注が低迷したことで業績は悪化。2001年3月期の連結売上高は、前期の3分の1の8億5千万円に落ち込み、
連結最終損益は5億8千万円の赤字(前の期は2千7百万円の黒字)になった模様だ。
スノーヴァの人工雪は、球状に加工した樹脂に水を吸わせて凍らせる。解けにくく、天然雪に近い雪質が得りれるのが特徴だ。室内全体わ冷やす必要がないため比較的低コストで運営でき、遊休地を活用した多角化事業を計画する大企業などに売り込んできた。
スノーヴァはゲレンデの建設を受注し、完成後は施設を借り受けて運営を代行する。
建設費は5億円、1施設につき年間2億円程度の入場料を得るというのが同社の描いたビジネスモデルだ。折からのスノーボードブームに着目し、「新規の工事受注とゲレンデ運営代行を両輪にして成長を狙った。
■ 初心者取り込めず
しかし客数減で事業計画は狂った。運営を代行しているゲレンデは香椎を含めて3カ所しかなく、1施設当応りの売り上げは目標の4分の3程度にとどまっている。それ以外の施設は定期的に人工雪をを販売するだけで、1カ所辺り年間1千万円程度の売り上げしかない。
大和総研の苦瓜達郎シニアアナリストは、「ブームが下火になったというより、
ゲレンデの運営に問題があった」と分析する。
例えばコースは頻繁に利用する上級者の要望を取り入れ、難易度の高い設計になりがちだった。大塚社長は、「初心者を取り込めるようなゲレンデ作りができなかった」と反省する。
■ 人工雪の販路を開拓
業績の悪化に対応してスノーヴァは、事業の再構築に取り組んでいる。
昨年末から希望退職者と指名解雇を実施、最盛期で53人いた役員・社員を3月末には34人に減らした。ゲレンデの新規受注は、採算性の良い案件に絞り、既存施設の客数増を図る。その上で新事業に活路を求める方方針だ。
屋内ゲレンデだけに供給していた人工雪を、一般のスキー場に雪不足対策用として売り出すほか、ショッピングセンター(SC)向けに子供用雪遊ぴ広場として販売する。
5月には千葉県市川市のSC内の敷地に、自社負担で広場をオーブンする。「ショールームとして活用したい。既に受注が期待できる顧客もある」と大塚社長は期待をかける。
新事業は、グレンデ建設・運営より自社の初期投資負担が小さいのが利点だが、「新規の銀行借り入れがきない」(大塚社長)ために考え出した窮余の策であることも確か。実際に収益に貢献できるかは、まだ不透明だ。
スノーヴァの現預金は前期末で5億円以下と見られ、新事業の成否が同社の将来を左右することになりそうだ。
このすぐ後にも、スノーヴァ話が続きます。